BOX 〜前向きな挑戦

向き不向きよりも前向き!!

サラリーマンボクサー -2 〜居場所〜

お昼を1人で食べることになったのが功を奏したのか、思いの外、別に強がっているわけではないが、充実した。

残りの時間は自分の調べたいことや、勉強にあてたり、ボクシングの動画を観てスパーリングの参考にしたりと、前へ前へと、ほんの少しでもいい、先に進んでいる感覚。欲しかったものが感じられたからだ。

同期とはあまり話さなくなった。

しかし、それが会社の全てではない。

当時、僕が出向していた会社では、約6人1グループ(このグループは通称、島と呼ばれている)で仕事をしていた。

基本的に仕事中はその島の人とメインにコミュニケーションをしながら仕事をすすめる。

つまり、同期とはお昼だけの関係だったので、仕事には何も影響はなかった。

むしろ、仕事を集中して行っていたらその島の人と自然と仲良くなっていき、働きやすくなっていった。

そんな僕の仕事は主に、事業主に架電を行い、書類などの不備の訂正願いや、催促などをすることだった。

クレームになりそうな案件は男にまわってくる風習があったので、僕も例外ではなく、クレームや、あたりの強い事業主のおっちゃんとバトルを広げることもあった。

そんなこんなで、出向して数ヶ月経つと、最初は同期と和気あいあいやっていた人も、次第に士気が落ち、愚痴が頻繁に飛び交うようになっていった。

 

「辞めたい」、「やりたくない」、「給料低すぎる」

 

後ろ向きな言葉が飛び交ったり、ある日突然いなくなる人もいた。

僕だって嫌だった。ただ、嫌なのはこの会社にきた当初からずっとだ。抜け出すために転職を進めていた。

しかしなかなか決まらない。

僕も転職に苦戦をしていた。

それでも僕はメンタルを安定して仕事を続けられた。なぜなら割り切れていたから。

 

こう思っていた。

ボクシングをやるために仕事をしている。

 

そう。毎日仕事が終わったらジムに行ってがむしゃらに練習していた。

ただプロになりたい。そう思いながら日々を過ごしていた。

ジムでは愚痴を言う人はいない。みんな前を向いている。ただ真剣に、ひたすらに、拳を撃つ。

スパーリングをしている時の目は皆んな怖い。

怖いけど立ち向かう。

息が切れて酸欠になるまでラウンドをこなし、闘って、終わったら、

「ありがとうございました」

と、お互いを心から讃えあい、お互いの良いところや改善点を話し合う。

これがスポーツマンシップか。

今まで、学生時代は野球とテニスをやっていたが、格闘技をやってからそれが顕著に感じられた。

互いに切磋琢磨する。

日々前に進んでいる。

日々強くなっている。

そして同じ目標に向かう仲間がいる。

僕にはボクシングがある。

だから、いくら傷つくようなクレームを会社で言われても、嫌な上司にキツくあたられても。転職の面接がうまくいかなくても。

僕は頑張れた。

 

「依存」

 

これは良くも悪くもその人を蝕むと思う。

1つのコミュニティに依存していたら、そこで起こったことが自分の全てのように感じる。

その場所でうまくやらなきゃ。みんなと仲良くならなきゃ。頑張らなきゃ。

僕はそんなことないと思う。

無理して頑張らなくてもいい。悪口を言われてもいい。みんなと無理して取り繕ってまで仲良くやらなくてもいい。

だってそれは世の中にたくさんあるうちのたった1つのコミュニティにすぎない。

自分に合った居場所はあると思う。

僕はそれがたまたまボクシングだった。

そして、その居場所は仕事にもいい影響があった。

決して多くはないが、職場の人で僕を応援してくれる人達がいた。

嫌味を言われても、闘ったら絶対に負けないと思うだけで、簡単に受け流すこともできるようになった。

居場所はたくさんある。

今の仕事がすごくやりがいあって楽しい。

そんな人がいたら素直におめでとう!

でも世の中そうじゃない人達もたくさんいる。

僕はあの出向先で嘆いている従業員をたくさん見てきた。

きっとそれは、他でも例外ではないはず。

だからぜひ探してみてほしい。

自分が夢中になれるほど好きな。

そんな居場所を。